Number Nine

参院選まで一週間となったわけですが、焦点になるんじゃないかと思われていた憲法論議はたいして行われてませんね。
憲法問題に関しては、当然のように9条が中心になるわけですけど、要するに自衛隊の存在がこれに抵触するんでは、ということは昔から言われてきた。そして、極端な人は自衛隊の存在自体が違憲であるというように言う。
でも、そもそも憲法は条文自体が曖昧な点が多いため、学説や判例を基にした無数の解釈によって保たれている部分は多いわけです。
そして、9条に関してもいくつかの学説があって、要するに1項と2項の文言をどのように解釈するかということなんですが、基本的に自衛権までは禁止されてないのではという解釈が自然なのではと思います。
結構、細かい点での議論が多いのでいちいち書きませんが、1項の「国権の発動たる戦争」とは宣戦布告を伴う戦争のことであり、また2項にある「前項の目的」を「国際紛争を解決する手段」としての「戦争」とすれば、自衛隊の存在自体を違憲としなくても、問題はないんじゃないかと読む学説もあるわけです。
じゃあ、イラク派兵はどうなんだとなると、「国際紛争を解決する手段」としての「武力行使」に当たる可能性が高いから、これは当然に違憲の疑いが強くて、首相は武力行使を目的としているわけではない、とか言ってますが、派兵の目的が平和活動への貢献ならば、別に自衛隊を派遣する必要はないわけだから、まったく目的と手段との間に関連性が無いわけで、これはかなり無理のある説明ですね。
さらに、自衛隊が攻撃された場合に武力行使ができるのかの問題に関しては、集団的自衛権などと言ってますが、わざわざイラクまで行って、よその国で行使する自衛権ってなんですかね。まあ、集団的自衛権という論理によって憲法を解釈するのは無理ですね。完全に違憲です。国際協調主義と言ったって、自衛隊派遣自体はあくまで国家行為ですから、首相の責任論が浮上するのも無理ないです。
自民党を支持している改憲派の学者も、この問題に対しては憲法をないがしろにするにもほどがあるとお怒りのようですし、もしかかる事態が発生して、それが裁判となった場合に、裁判所はかなり厳しい判決を下すことが予想されます。統治行為の法理(高度な政治的行為に関しては、判断が理論的に可能であっても、裁判所は判断しないとする法理)で言い逃れることは許されないでしょうし。ただ、この点が論議される具体的な訴訟が起きる可能性は低い(日本国憲法は付随的審査制を取っているため、具体的な事件においてでしか憲法判断できない)ので、やはり野党に期待するしかないのかな。まあ、彼らがどこまで信頼に値するかは微妙なとこだけど。

まあ、結論から言って、9条を改定する必要はないし、日本国憲法の改正条件の厳しさから言えば、そんな改正は事実上不可能です。何より、既成事実を作ってから、それに合わせて改正するなんて論外です。というか、ぶっちゃけ言って、改正したがってるのはアメリカだけですから。

やっぱり、選挙で国民が審判を下さなきゃ民主制は機能しないんですよ。裁判所はあまり口出ししちゃいかんと思いますしね。J政党が推し進める政策に反対が8割なのに、なんでそれがダイレクトに選挙に反映しないのか不思議でしょうがない。議員定数不均衡のせいか?
まあ、改正するなら、まず国会議員の免責特権や不逮捕特権を無くしてからにしてください。

参考
第9条【戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認】

  1. 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。