Syrup 16g / Mouth to Mouse (2004)

julien2004-06-27


シロップ16g(グラム)は五十嵐隆(vo,g)、中畑大樹(dr)、キタダマキ(b)の3人からなるバンドですが、この作品は五十嵐さんのパーソナルな面が限りなく強くて、まるでシンガーソングライターの作品のようです。
とにかく言葉、言葉、言葉。ネガティブな日常から浮かぶ言葉が、現実の儚い夢や希望や生のリアルを感じさせてくれる。「生きるのがつらいとかしんどいとかめんどくさいとか、そんなこと言うために二酸化炭素吐いてんじゃねえよ」。だから、その先にあるのはジャケットの手が求めるように「すべての言葉しっぽ巻いて逃げ出すほどのリアル」。でも、そのリアルな手が、影で暗いのを分かってるんだね。
シンプルだけど計算されたバンドサウンドが、70分を長く感じさせない。このサウンドがあるから、この言葉が生きる。言葉に潰されそうになるくらい重たくて切ない作品を何度も聞きたくなるのは、この音があるから。ナンバーガールやジェリー・リー・ファントムを思い出してしまう。
ただ、この作品がいる場所って、なかなか見つけられないように感じる。聞いていてもここにあるように、そんなふうにリアルに感じないのはなんでなんだろう。だから「妄想リアル、もっとSo Real」なのかな。探していること、求めること自体がリアルなんだろうか。構造的に言えば、ブルーでいながら、その現実=リアルを肯定するってこと。それほど新鮮なものでもないけど、そうだからこそ、音や言葉の力が現れるのかもしれない。
ただ、反射的に自分が生きている今をここまで感じる作品はあまり無いと思う。言葉に潰されるな。そして、音にも飲まれるな。このアンヴィバレントな感覚と、それを聞く自分との距離感こそが、この作品の本質かもしれない。怖いくらいに傷やハートに染みる。
ASIN:B0001DD0YO