Patti Smith / Gone Again (1996)


Holeに続いて残されたものの歌を。
パティ・スミスは元MC5、TelevisionのFred Smithと結婚した後、事実上の引退をした。88年にひさしぶりに発表した『Dream of Life』で政治的な歌と「人生という夢」についてを歌った彼女は、その次の年にかつての恋人であったロバート・メイプルソープの死に直面する。90年にはバンド仲間のリチャード・ソウルを、94年に弟のトッドと夫のフレッドを相次いで亡くす。そして、この年はカート・コバーンが死んだ年でもあった。
この多くの死が、彼女をふたたびアーティストとして歩き出させる。
「再び去りゆく」と題されたものは、多くの人の死だけでなく、彼女の姿でもあった。このなかで歌われるのは、死を静かに見つめながら受け入れる彼女でもあるし、それに祈りをめぐらすことが、同時にそこから歩き出すことへと繋がる姿でもあった。
そして、「共食いの夏」に見られるように、ここでも彼女は自分だけでなく世界を見つめることも忘れない。ここまで生きることから目を離さない人がいることが私にとっては驚きでもあるのです。

死んだようでいながら、あたしはすっかり目覚めていた
"Dead to the World"

おそらくキリスト教的なものが深く秘められているようにも思える歌詞を、わたしが完全に理解することはできないけれど、痛々しくも力強い彼女の言葉を読んでいると、言葉や歌の持つ力を感じずにはいられない。

もしもひとつだけ
おまえのためにできることがあるとしたら
おまえも翼になってほしい
真っ青な空に浮かぶ翼に
"Wing"

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