Ash / Meltdown (2004)

julien2004-05-26


最初に聞いた時は、M1"Meltdown"のイントロでプライマル・スクリームかと思いました。聞き進んでも今までのアッシュにあった切ない感じが音には表れていなくて、これは一体誰なんだろう、と物凄く違和感が沸いてくる。声は変わりようがないティムだから、アッシュなんだ、アッシュの新作なんだ、と思っても、やっぱりよく分からない。激しい曲とバラードの対比が弱いように感じて、ひたすらパワーコードなのか、単純だな、と結構微妙な感じでしたね。で、最初に印象に残った曲はM3"Evil Eye"。これだけはアッシュだとか思ってました。
ところがとんでもない。2,3回聞いていると、紛れもなくアッシュなんですね、全曲。コード進行やサウンドと反比例するかのように切ない歌詞を読んでいると、この人たちは全然変わってない。ボーナストラックに入ってるバズコックスで思いましたが、彼らってバランスの取り方が独特なんですね。音だけじゃなくて、音楽全体の関係のなかでバランスを保ってるんだと思います。だから、始めに私が思ったようにアッシュの他の作品との関係だけでこの音を聞いて文句言っても、仕方がないと思うんです。前作『Free All Angels』から3年が経過して、その間に色んな音が現れて、そして今がある。あの頃はリバティーンズもジェットもマンドゥ・ディアオもいなかったわけで、今のこの空気のなかでアッシュの新作を聞く時に初めて、この音の真価が分かるように思います。
アッシュがこんなに愛されるわけは、きっとこういうところにあるんだと思う。コドモっぽく自分のやりたいことだけをやってるように見えて、みんなの望んでいることには敏感なんだろうと思う。「アッシュの最高傑作とは常に最新アルバムである」。音は激しくても実はけっこう古典的な作品だったりしますが(USのヘヴィロックっぽい)、美メロの美メロによる美メロのための最高に素晴らしいアルバム。前作の"Sometimesなんかに表れていた"転調の切れは、もう絶品としか言いようがないレベルです。このままアメリカのラップ・メタルやバブルガム・パンクを駆逐してください。

  • My Favorite Tracks

M1: Meltdown , M2: Orpheus , M3: Evil Eye , M5: Starcrossed , M6: Out of the Blue , M8: Detonator
M9: On a Wave , M10: Won't Be Saved , M12: Tinsel Town [*]
ASIN:B00021LPOC