ZNR / Barricade 3 (1977)

julien2004-05-14


例によってこれもLocus Solusで購入したもの。
Joseph RacailleとHector Zozouからなるフランスのユニットで、時は1968年5月。パリ五月革命のさなかで生まれたいくつかの前衛グループがいて、まさにそのバリケードのなかで演奏したグループもいたらしんです。翌年にソルボンヌ大学共産主義思想の学生を中心にその名前もずばりBarricadeというロック・グループが結成され、そこにはZNR(ゼッド・エヌ・エール)の二人もいました。目的が「政治参加」だっていうから、私なんかは愉快になってきます。
実際にZNRとして活動を始めたのは1975年なので、それなりに時間が経過してからということも言えそうですが、ベースにあるのは革命の精神だったりするんですね。
で、音はどうかといえば、これがロックとは言えそうにない、なんとも不思議なもの。しかも、基調はサロンミュージックなんです。「現代のサティ」なんて帯に書いてありますが、ピアノなどのサロン的なサウンドとアナログ・シンセを合わせた音は、美しく優雅でありながら、かなり危険な匂いがします。この「かなり」は相当に強調したほうがいいと思うくらい、やばい匂いがします。あえて言えば、Silver Applesを18世紀版で演奏したような感じなんでしょうか。情熱的で凶暴で野蛮な本性を、高貴な音で包み隠しているというか。。あえて言えばチェンバー・ロックの仲間なのでしょうが。
クラシックと、現代で言うようなエレクトロニカの落とし子って言ったほうがいいのかもしれません。
スリーブに載っている二人の写真も、いかにもお洒落、知的で貴族的な雰囲気を漂わせているんですが、いかんせん目が危ない。これは恐い。かなりイっちゃってる感じです。そこがいいんですけどね。
古典的で保守的な音も好きで、さらに刺激的なものも大好きという人は、一生手放せなくなりそうな恐怖のアルバムではないでしょうか。簡単に真似できそうで、実際にやるのは無理なんじゃ、と思わせる不思議な音の世界です。ちなみに当時の売り上げは155枚だそうで、今では知る人ぞ知る名盤として扱われるんですから、時代の評価って分からないものですね。というか、それしか売れなかったアルバムを自分が聞いていることがとても不思議です。
ASIN:B000026SKO