Joy Division / Substance (1977-80)

julien2004-04-27


1980年、UKで最高の期待をもって迎えられ、アメリカツアーへ行こうとしていた4月18日、ジョイ・ディヴィジョンのボーカル(というよりも象徴だった)Ian Curtisは、自宅の台所の衣装掛にロープを垂らし、自分の首にも巻く。そして飛び降りる。それがこのバンドの決定的な終わりだった。
そして、これこそがジョイ・ディヴィジョンについて常に付きまとっていること。私は彼らを始めて聴いた時、すでにそのことを知っていた。彼らはすでに伝説だったし、だから、私にとってのイアン・カーティスはいつも首にロープを巻いていた。そしてブラブラと揺れていた。
残りのメンバーはNew Orderを結成、テクノの歴史にとって重要な役割を果たす。でも、それはジョイ・ディヴィジョンの続きではなく、イアンが死んだ日にこのバンドの幕は下りていた。

彼らについては、よく演奏が下手だの、ポップじゃないだの、と決まり文句のように言われるものがある。でも、揺れるイアンではなく、そういうことが気になったことは一度もない。なぜなら、キャッチーではないけど、彼らの曲はどこまでも張り詰めていて美しく、私にはポップなものにさえ聞こえる。BGMには出来ない曲。聴いていると言葉が突き刺さってくる。イアンは揺れているけれど、彼の言葉はその場所をどこまでも響いていく。
残された音源はボックスセット『Heart and Soul』でほとんど聴くことができるが、ライブや別テイクを除けば、全部で45曲しかない。
彼はいつも詩を書いていたらしい。常にカバンを持っていて、その中には紙がたくさん。イアンはそれを言葉で埋め尽くしていた。

それが迫ってくる それが迫ってくる感じ
誰を呼べばいいのかわからない恐怖 誰かの声を聞きながら
"Digital"

彼がどこへ行きたかったのかは分からない。ただ、生きている空間のなかで、言葉にしかできないものと言葉にはできないものを歌っただけなのかもしれない。

ぼくらはこのまま進んでいくべきなのか
それとも安全に距離を保っておくべきなのか
"From Safety to Where"

君と連れ立って夜に向かう
友達が行かないような場所を見つける
そして ぼくは友達を探していた
そして ぼくに無駄な時間はない
そう 友達を探していた
"Interzone"

私にとって揺れているイアンは友達だった。彼の書く歌詞に無駄な言葉はひとつもない。「無駄な時間はな」かった彼は、時間を永遠に止めてしまった。

踊れ 踊れ 踊れ 踊れ ラジオに合わせて踊れ
状況が厳しくなったら大声で叫ぶ
ぼくらが学んできたことも 最早充分ではない
言葉は要らない ぼくらが知りたいのは ただサウンドだけ
ショーのビートに合わせて 愛をシンクロさせて
そして ぼくらは踊れる 踊る 踊る ラジオに合わせて踊る
"Transmission"

私たちは踊れる。クラブや街角で。
そこに言葉は要らないかもしれない。でも、それならなぜあなたは多くの言葉を残したんですか?
私はイアンを降ろしてあげたくなった。いつまでも揺れていなくていいから。
あなたが自殺したなんてことは、もうどうでもいいことだ。
だから、私はこう言ってくれたあなたにこそ、こう言いたい。
「歩くな 黙って 歩き去ってしまわないでくれ("Atmosphere")」

「愛は 再びぼくらを引き裂く("Love Will Tear Us Apart")」
でも、「心と魂を人は燃やすだろう("Herat and Soul")」
もう、私は平気だよ。そう、もう平気なんだ。だから、あなたのことをもっと違った目で見つめたい。いつまでも揺れていなくてもいいから。
そして、私も心と魂を燃やし続ける。あなたのように。

*このアルバムはシングルやアルバム未発表曲を集めた編集盤です。『Unknown Pleasures』と『Closer』のどちらかにしようかと思ったのですが、あえてこれを選びました。ちなみに彼らが所属していたファクトリーというレーベルにはピーター・サヴィルという素晴らしいデザイナーがいて、ジョイ・ディヴィジョンニュー・オーダーも、みな彼がジャケットのデザインをしています。右上の画像はCloserのジャケに使われているもので、イアンを追悼しているようにしか思えません。

  • Favorite Tracks

彼らの曲は全部
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