The Stooges / The Stooges (1969)

julien2004-04-08


よくパンクの元祖だと言われるグループが2つあって、一つがMC5。そしてもう一つがこのストゥージズ。3作目からはグループ名からもはっきりしてくるんですが(Iggy & the Stooges)、これはイギー・ポップがいたバンドです。
ただ、この作品に関してはそれほどパンクっぽいわけでもない。ピストルズがカバーしたことでも有名な「No Fun」も速いわけじゃないんで、パンクの速さを期待して聞く人は結構拍子抜けするかもしれません。イギー作品のなかでも特殊なデビュー作。
でも、この作品を聞かずにパンクを聞くのもどうかと思います。とかいう私だってパンクの後にこれを聞いたんですが、この作品はジワジワと来るんです。
イギーのボーカルは、ドアーズのジム・モリスンからの影響大とのことで、M3「We Will Fall」やM6「Ann」なんてそのまんまモリスンなんですが、他にもローリング・ストーンズからの影響も小さくないと思うんです。彼が最初にはまっていたのがブルースだったってことでも、モッズたちと共通してます。ただ、なんか違うんですね。何よりビートが違う。これは、ロンドンから生まれたサウンドではなく、紛れもなくアメリカのデトロイト産です。イギーに関してはスキャンダラスな面が凄かったらしく、裸でガラスの破片の上を転がるとか、ライブ中にナイフで自傷行為をするとか、今でこそ普通かもしれませんが(本当か?)、当時のことを考えるとロックの暴力性をここまで身体で表現した人もいなかったんじゃないかと。

この1stのプロデューサーは、ヴェルヴェッツを辞めたばかりのJohn Cale。彼のカオスな部分と、このバンドの持つ負の因果性のようなものががっちりと組み合って、とんでもない世界が作られています。うーん、黒いというか、暗い(作品が暗いという意味じゃなくて、夜の暗さ)。
名前に反して、作品はそれほどポップじゃないですが、ジワジワと来るこの迫力は忘れられない傷跡を残してくれます。影響力云々はともかく、紛れもなくイギーは最高のロックンローラーの一人。
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