The Jam / Setting Sons (1979)

julien2004-04-04


パンクなのに、つんつんヘアも要らないし、安全ピンも皮ジャンもジーパンも必要としなかったジャム。
オアシスから猛烈なリスペクトを貰って「ブリット・ポップの総帥」にされたりして、今でも尊敬されてるミュージシャンであるPaul Wellerですが、最初にパンクをやってたってことのほうが私には不思議だったりします。「The Jam=パンク→ウェラーはパンキッシュ」みたいな感じで当たり前にされてますが、ちょっと考えてみれば、その後のウェラーにはパンクのパの字もない。
むしろ、最初からモッズをメンタリティにしてた彼が好きだったのはR&Bやソウルといったブラックミュージックなわけだし、それは60年代のモッズそのものですね。ジャム解散後に結成したThe Style Councilもその後のソロ活動も、ひたすら原点回帰というか、自分がいちばん好きな音楽をやってるようにしか見えない。ウェラーの音楽人性において特殊なものこそがパンクなのでは?と思うのは私だけじゃないでしょう。
デビュー時のウェラーは19歳。それから5年の間に彼は恐ろしいほどのスピードで成長して、バンドの枠を中から破る形で解散してしまうわけですが、逆に言えば、もうパンクをやってくれないのが勿体ない気もします。ジャムは最高にクールだし、私はクラッシュやピストルズよりも数段好き。メロディに関してはバズコックスに勝てるパンクバンドはいないと思うけど、このクールさ、熱いのにどこまでもクールなこの感じは、ジャムにしかない。それは、ビートに対する感覚が他のバンドとは根本的に違うからで、でも、彼はパンクをジョニー・ロットンほどには刹那的にも、アート表現としても捉えていなかった。要するに、音楽のくれる楽しさが好きでしょうがないんです。だから、ただ音楽が好きなだけだったハートが、色んなものを掴むことで、別のビートを必要としたってことなのかなぁ。もう、絶対にパンクのビートを求めたりはしないんでしょう。

このアルバムは4枚目。パンクのビートが徐々に変化していく過渡期の作品。だから、ウェラーの感覚がいちばん伝わってくるものになってると感じます。収録曲は素晴らしいものばかりですが、ジャムにはアルバム未収録のヒット曲が多いので、ベスト盤は外せません。
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