Seven Star

julien2003-10-16

あれから何時間が過ぎたのだろう。
気付けば揺れる白いものは、煙草のケムリに変わっていた。


その星はどこか遠い国を思わせる。
そして私の前に広がるのは、七つの大陸と七つの海。

それは世界が1つの希望と多くの欲望で成り立っていた頃の話。
旅立つ船乗りの胸に宿るもの。それは輝ける黒い星。宇宙に満ちた暗黒物質のバリエーション。
そして、数え切れないほどの偶然や思いがけない発見、見るはずのない悪夢たち。
だがそれも、今は海底深く静かに眠る。


私の船はゆっくりと進んでいく。
ああ、ここはユリシーズを苦しめたあの入り江なのか、どこからか歌が聞こえてくる。
私たちはローレライの声を耳を潰してでも聞いてはならない。
なぜならこの船には帆柱がないのだから。風の力に身を任せて生きてきたわけじゃないのだから。
だから、その歌がかきならされた竪琴の旋律によろうと、刻むビートのラップであろうと、私たちは耳を塞ぎ、先へ進まねばならない。

分かるだろうか、我々はユリシーズの呪われた末裔なのだ。
彼がかつて神に逆らった罰を、今こうして私が甘んじて受けねばならないのか。
知恵は非情に自然を征服した。そうやって死刑宣告は限りなく猶予を与えられ続けた。だが、限界はもう見えている。入り江の先には大陸も大洋も見えない。


復讐するのがいつだってあなたの役目だった。


白いものが視界を遮る。
この場所に、どこかから聞こえてくる歌は誰の歌だろう。


ほら、君たちは家に帰らなきゃいけないよ。
なぜ、いつもそうやって私を苦しめるのだ?
理性は昔から見苦しいものだった。だが、繰り返すように私にはこの身を縛るための帆柱すら持ってはいない。見苦しく生きることさえ許されていないのだ。


復讐のためか、神の代弁者たる現代のローレライが今日もブラウン管の向こうで歌い続ける。