茶房 李白

julien2004-07-25

水道橋を降りて、白山通りを神保町方面に5分ほど歩く。右側の路地へと入り、白山通りと並行に走る道に入ると、ひっそりと佇んでいるのがこのお店。
そこは谷崎潤一郎の『陰影礼賛』そのままの世界。
店内は店主を始めとした初老の男性しか働いていない。確かに「茶房」という言葉がしっくりとはまる。

最初の日、僕らは2階へと案内された。急な階段を昇ると、そこにはたった1席あるだけ。店主が気を利かせてくれたのだろうか。隣の和室には茶碗が展示されていた。外界から漏れる光の陰で、彼女の声がこだまする。
ここはけして一人で来る場所じゃない。僕の記憶のなかでは、あの声がこの時間を支配している。
でも、今なら、きっとそんな記憶もこの空間の一部に沁みこんでしまっているだろう。