ガラスの靴

julien2003-12-11

あの人はここを知らないだろうから、書いてしまいます。
私の名前はオフィーリア。
あの場所であなたに語りかけているのは、この私。
つまり、僕。


もう一度、よく考えてみればいいんだよ。
あなたには怖い母親と冷たい姉妹がいるの?
いつ、あなたはカボチャの馬車でお城に向かったの?
あなたは12時の鐘を、どこで聞いたの?


あなたが見ているのは鏡のなかの世界かもしれないよ。
自分で、自分に向かって魔法をかけて、片足に残されたガラスの靴をずっと黙って見つめてる。
でも、知ってる?もう片方は、どこにだって無いんだよ。
「いつか、私を迎えに来てくれる人がいる」
あなたのもとには、これからだって男が尋ねてくるでしょう。
あなた自身が言うように、男の目には、あなたは捨て猫に見えるかもしれないから。
でもね、それは王子様なんかじゃない。
だって、王子様は、もう行ってしまったんだよ。


ガラスの靴なんて脱いでごらんよ。
あなたにはちゃんと足があるし、誰かを愛するハートだってある。
君はけしてボロをまとったシンデレラなんかじゃないんだよ。
悲劇のヒロインは、現実では悲劇のままに終わるしかないんだ。
ハッピーエンドを期待する観客なんて、どこにもいないんだから。


なんで、そうやって座りながら、何かを求めて、何かを待ってばかりいるの?
どうして、いつも自分に向けてしか喋らないの?
どうして一人でいようとするの?


君には、友達がいるんだよ。
僕だってそうだよ。君の言葉をいつだって聞いてあげるくらいできる。



片方だけのガラスの靴なんて、ほら、捨てちゃえばいいのさ。
そうすれば、もっともっと軽くなれる。
そうすれば、背中に羽があるってことに気付けるはずだよ。